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腸内環境とがんの関係性

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腸内環境とがんの関係性
人の腸内には、およそ1000種類、9000兆個にも及ぶ微生物が生息しており、このような人の内外に存在する細菌の集合体を人の内外に存在する細菌の集合体をヒトマイクロバイオームまたは腸内フローラと呼びます。
腸内に生息する微生物達は主に善玉菌、悪玉菌、日和見菌の3種類に分かれており、人によって生息する種類や割合は異なります。
種類 腸内での働き 主な細菌
善玉菌 ・腸の内容物を発酵させた際に有益な物質を生成する腸内細菌
・悪玉菌の増殖を防ぎ、腸の運動を促進させることで腸内環境を整える
ビフィズス菌
乳酸菌
酵母菌
悪玉菌 ・腸の内容物を発酵させた際に有害な物質を生成する腸内細菌 ウェルシュ菌
ブドウ球菌
ベーヨネラ
日和見菌 ・健康な場合は無害だが、腸内環境が悪い場合は悪影響を及ぼす 大腸菌
バクテロイデス
これら腸内細菌達は腸内に運ばれてきた食事を発酵させることで様々な「代謝物」を生産します。
腸内細菌の中でも人体だけでは分解できない栄養素やビタミンの合成や人体に良い影響を与える抗炎症物質、二次代謝産物などを生成する働きがある善玉菌は人が健康を保つ上で非常に重要となります。

反対に、代謝の過程で有害な代謝物を生産する悪玉菌は、腸内環境の悪化を促進させる原因となり、更にがん細胞の発生や増殖の他、感染症などを防ぐ働きを持つ細胞性免疫(Th1)の活動を抑制して、様々な病を患う原因になります。

健康な人の腸内細菌の割合は 善玉菌:15% 悪玉菌:10% 日和見菌75% 程でバランスが取れているとされています。
腸内細菌のなかでも数が多い日和見菌は基本的に健康な人の場合は無害ですが、腸内環境が悪化している場合は毒素を産生して下痢や炎症などを引き起こす原因になります。

健康な人の場合でも善玉菌と悪玉菌の割合は僅かな差しかなく、些細なきっかけからバランスを崩すことも珍しくありません。
このことから、腸内環境の改善や健全化には、日頃から腸内環境に配慮した生活を送る必要があるといえるでしょう。
善玉菌を増加させるには
腸内環境は生活習慣と密接な関係があり、善玉菌の増加を目指すには食生活を改善することが有効です。

人の腸内に生息する主な善玉菌は乳酸菌の1種であるビフィズス菌です。
ビフィズス菌は一部のヨーグルトや発酵乳食品などに含まれており、これらの発酵乳食品に含まれるその他の乳酸菌であるサーモフィラス菌やブルガリア菌なども腸内の環境を整えてビフィズス菌の増殖を促進させる作用が期待できます。

食物繊維の中でも水に溶けやすい性質を持つ水溶性食物繊維は善玉菌の主な栄養源であり、摂取することで善玉菌数を増加させて、悪玉菌数を減少させる作用が期待できます。
更に、水溶性食物繊維を分解する際に生成される水素はがん細胞が大量に産生して臓器機能に負担を与える乳酸を還元すると共に、細胞が腫瘍化する原因となる活性酸素を除去する作用が期待できます。

また、水素と同様に善玉菌が代謝の際に生成する短鎖脂肪酸は、腸内を弱酸性にする働きがあり腸の免疫機能を活性化させると同時に、大腸の蠕動運動を促進させることで悪玉菌の増殖を抑制する働きがあります。
水溶性食物繊維の多く含む食品
ココア ごぼう 抹茶
にんにく カレー粉 大麦
ゆず:果肉 かんぴょう 納豆
腸内環境を悪化させる要因
主な腸内環境の悪化原因は以下の4種類ございます。
腸は消化器の機能を調整するために神経細胞が集中しているデリケートな器官です。
腸内環境を改善するためには、善玉菌の増加を目指すだけではなく、悪玉菌を増加させる要因と取り除いて腸内環境を整える必要があります。
1.食生活の偏り
肉類(脂質や動物性たんぱく質)中心の食生活は腸内の悪玉菌を増やして腸内環境を悪化させる原因になります。
肉類の摂取量を減らすと共に野菜や穀物類などの摂取量を増やすことで腸内環境の改善作用が期待できます。
2.加齢
年を取ると善玉菌のビフィズス菌が減少して、ウェルシュ菌などの腸内環境を悪化させる原因になる悪玉菌が増加していきます。
このため、若い方よりも腸内環境を意識して生活を送る必要があります。
3.ストレス
腸は神経細胞が集中している性質上、ストレスの影響を受けやすい器官です。
腸の運動に関与している神経伝達物質であるセロトニンは、慢性的なストレス受けると産生量が減少して、腸内環境を悪化させる原因になります。
4.投薬の副作用
一部の薬剤は腸の働きを妨げる場合もあり、抗生物質は病原菌と同時に善玉菌を減少させるため、腸内環境を乱す原因になる場合があります。