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免疫チェックポイント阻害剤の注意点

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免疫チェックポイント阻害剤の注意点
最近メディアで目にした方も多いと思います。
それでは、免疫チェックポイント阻害剤とはどのような薬なのでしょう。

免疫細胞の一種には、自己の細胞を攻撃しない為のブレーキボタンがあります。
そして、癌細胞にはこのブレーキボタンを押すことが出来る物質(糖たんぱく質の一種、免疫チェックポイントたんぱく質)を産生して免疫細胞にブレーキをかけて免疫細胞の攻撃からのがれる機能を持っています。

これに対し、免疫チェックポイント阻害剤は、癌細胞のブレーキを押すことが出来る物質即ち、免疫チェックポイントたんぱく質を阻害し、免疫細胞が癌細胞を攻撃する事を可能にする為の分子標的薬の事を「免疫チェックポイント阻害剤」と言います。

この様に、癌細胞が免疫細胞の働きを回避する機構(免疫回避機構)の一部を働かなくする事で癌細胞の進行を遅らせる治療法です。

<> 平成28年6月現在免疫チェックポイント阻害剤として承認されている薬は二剤
抗PD-1抗体 二ボルバム 薬剤名 オプジーボ
抗CTLA-4抗体 イピリムマブ 薬剤名 ヤーボイ
(薬剤情報は後述参照)
癌細胞の免疫回避機構とは
腫瘍には腫瘍細胞にしか存在しないさまざまな抗原があり、抗原を認識することで、腫瘍免疫系が腫瘍細胞に対して攻撃する事を腫瘍免疫が働くと言います。
しかし、腫瘍はそう易々と腫瘍免疫細胞に攻撃されません。
この事を「免疫寛容又は、免疫回避機構」が働くと言います。
癌は様々な手段で免疫から逃れます
癌細胞は、全身性および局所的な免疫抑制環境を作る事により免疫からのがれるのです。
癌細胞と癌細胞を取り巻く免疫抑制環境
近年の研究で、癌細胞が産生する免疫抑制分子や癌細胞を取り巻く免疫抑制細胞の存在が明らかになってきました。
癌細胞が産生する免疫抑制分子
IL-6、IL-10、VEGF、TGF-β、などの免疫抑制サイトカイン、プロスタグランジンE2,や免疫チェックポイントたんぱく質、CTLA-4、PD-1、TIM-3、LAG-3、B7-H3、B7-H4、B7-H5、TIGITなど様々な免疫抑制分子を産生し、免疫細胞の活性を抑制するのです

・癌細胞のまわりやリンパ節や末梢血に免疫抑制性細胞が誘導され免疫抑制環境を構築します。
・制御性T 細胞(Treg)
・骨髄由来免疫抑制細胞(MDSC)

この様に癌細胞を取り巻く環境は、免疫細胞の活性を抑制するのです。
免疫チェックポイント阻害剤(イピリムマブ、抗CTLA-4抗体)
ヒトの体には、侵入してきた細菌やウイルスなどの病原体、体内にできた癌細胞などを攻撃しようと働く免疫応答機能が備わっていますが、免疫チェックポイントは免疫が過剰な攻撃を続けたり、正常な細胞を攻撃したりしないようにブレーキをかける役割を担っているのが免疫チェックポイントたんぱく質です。

活性化した細胞傷害性T細胞(CTL・キラーT細胞)に発現するCTLA-4は、活性化しすぎて暴走するのを防ぐために、ブレーキ役として働くいくつかの分子のうちの一つです。

障害性T細胞が活性化すると、表面にCTLA-4という分子が発現します。
癌細胞を食べた樹状細胞又はマクロファージは、その目印である抗原を提示しますが、樹状細胞又はマクロファージのB7と言う分子とCTLA-4分子が結合すると、障害性T細胞の働きが抑制され、癌を攻撃しなくなるのです。

抗CTLA-4抗体(免疫チェックポイント阻害剤)は、リンパ節の中でCTLA-4分子と結合することで、B7分子と結合が出来なくなり、障害性T細胞の働きが抑えられるのを防ぐ事で、癌細胞への攻撃態勢を整えた障害性T細胞が、癌のあるそれぞれの部位に移動して、癌細胞への攻撃が始まるのです。

また、CTLA-4分子は、免疫を抑制する機能をもつ物質で、制御性T細胞(Treg)の表面にも存在していて、制御性T細胞の免疫抑制作用のひとつを担っています。

抗CTLA-4抗体(イピリムマブ)は、免疫チェックポイントたんぱく質の働きを阻害するので免疫チェックポイント阻害剤と言います。
抗CTLA-4抗体(イビリムマブ)による抗腫瘍免疫応答の増強
(a)活性化T細胞に発現するCTLA-4に対する抗CTLA-4抗体の作用。
活性化したT細胞に発現するCTLA-4と抗CTLA-4抗体とが結合することにより、CTLA-4とCD80あるいはCD86との相互作用は阻害され、活性化T細胞の抑制が解除される。

(b)制御性T細胞に対する抗CTLA-4抗体の作用。
制御性T細胞は恒常的にCTLA-4を発現していて、そのCTLA-4と結合した抗CTLA-4抗体を介した抗体に依存性の細胞傷害活性により制御性T細胞が除去され、制御性T細胞による免疫抑制が解除されます。
イピリムヤブの臨床効果
切除不能のメラノーマで治療歴のある患者676人を対象とし、患者を3:1:1の割合で3群に割り付けました。
イピリムマブ3mg/kgとペプチドワクチンgp100の併用群に403人、gp100のみを投与する群に136人、イピリムマブ3mg/kgのみを投与する群に137人が割り付けられました。

主要評価項目のOS(生存期間)の中央値(平均)は、併用群は10.0カ月、gp100のみを投与する群は6.4カ月となりました(p<0.001)。イピリムマブのみを投与する群は10.1カ月でした(p=0.003)。イピリムマブを投与した2群間に差はありませんでした。

1年生存率は、併用群43.6%、gp100のみを投与する群25.3%、イピリムマブのみを投与する群45.6%となり、2年生存率はそれぞれ21.6%、13.7%、23.5%となりました。
3年生存率は22%であり、生存率は3年目以降、ほぼ一定となることが確認され、長期生存を示す結果が報告されています。

ただし、イピリムマブは、T細胞の活性化と増殖により、重度で致命的な免疫関連の有害事象を引き起こす可能性があります。
このような免疫関連の有害事象は皮膚や消化管に発現しやすく、多くは治療中に最初に発現しますが、イピリムマブの投与中止後、数週間から数カ月を経て発現する場合もあります。

同試験のグレード3以上の免疫関連の有害事象は、イピリムマブを投与した群の10〜15%、gp100のみを投与した群の3%に発現しました。
試験治療薬に関連する死亡は14人(2.1%)で、うち7人は免疫関連の有害事象と関連していました。
根治切除不能な悪性黒色腫に対するイピリムマブの承認にあたって
2015年7月に、抗CTLA-4抗体イピリムマブが「根治切除不能な悪性黒色腫」を効能又は効果として製造承認されました。

国内の切除不能悪性黒色腫患者に対するイピリムマブの使用実績は、臨床試験で使用された35例のみです。
イピリムマブの海外における使用実績、文献報告および国内臨床試験での使用経験に基づいて、副作用への対応について以下に記します。
イピリムマブの副作用
イピリムマブによりCTLA-4を遮断すると、障害性T細胞が活性化され、主に皮膚(皮膚炎/そう痒症)、消化管(下痢/大腸炎)、肝臓(肝機能値異常/肝炎)、内分泌腺(下垂体炎、副腎異常、甲状腺異常など)、神経系(末梢性ニューロパチーなど)及びその他の臓器(間質性肺炎/ブドウ膜炎/上強膜炎/ 腎炎など)に免疫に関連した副作用が生じる可能性があります。

臨床試験において、これらの免疫に関連した副作用により重篤又は死亡に至った例も報告されています。
また、これらの副作用の大半は、本薬投与期間中に発現しましたが、本薬の投与中止後、数週間から数か月経過してから認められることもあり、十分な注意のもと治療を行う必要があります。

イピリムマブによる副作用は、特定されたもの以外の全身のあらゆる器官に発現する可能性があることにも注意が必要です。
一般的に、免疫に関連する中等度の副作用については、イピリムマブを延期し、中等量のステロイド全身投与により治療すること、また重度の副作用については、イピリムマブを中止し、高用量のステロイドの全身療法により治療することが推奨されます。

これらの免疫に関連した副作用が発現した場合、速やかに躊躇なくステロイドによる治療を開始することが重要です。
また、これによって症状が回復した場合、症状の再燃を防ぐため、1ヵ月以上かけてステロイドをゆっくり漸減することも必要です。

もしこのようなステロイド治療により症状の改善が認められない場合には、他の免疫抑制剤を投与することによって回復したことが報告されており、下痢に対するインフリキシマブ、肝障害に対するミコフェノール酸モフェチルといった免疫抑制剤を追加することを考慮する必要があります。

注;本薬副作用について
欧米人と日本人とでは、体質が異なる為、副作用の出方が異なる場合がある事を考慮する必要があります。
イピリムマブの費用
治療開始から1ヵ月間の治療費(薬剤費と医療費)は、全額自己負担ならば351万9690円。混合診療(保険外併用療養)が認められると341万2470円です。
免疫チェックポイント阻害剤(抗PD-1抗体 二ボルバム)
PD-1(programmed cell death?1)受容体は、活性化 T 細胞の表面に発現します。
一方 PD-1受容体に特異的に結合する物質である PD-L1および PD-L2は、通常抗原提示細胞(樹状細胞、マクロファージ)の表面上に発現します。

活性化T細胞に発現するPD-1と抗原提示細胞(樹状細胞やマクロファージ)の表面上に発現するPD-L1(別名; B7-H1) および PD-L2(別名;B7-DC) は、T 細胞応答を抑制もしくは停止させる共同抑制因子として働く免疫チェックポイントたんぱく質(免疫グロブリンスーパーファミリーに属する膜たんぱく質PD-1やPD-L1)です。

PD-L1 又はPD-L2が PD-1 に結合すると T 細胞からのサイトカインの産生が低下し、T細胞の活動を抑制するシグナルが伝達されます。
癌細胞は T 細胞からの認識を逃れるために、この免疫チェックポイント・シグナル伝達を利用するのです。

免疫チェックポイント・シグナル伝達を阻害するのが免疫チェックポイント阻害剤(抗PD-1抗体 二ボルバム)です。
PD-1の機能および抗PD-1抗体 二ボルバムの作用
(a)PD-1の機能
活性化T細胞の表面に発現するPD-1と癌細胞に発現するPD-L1あるいはPD-L2との相互作用により、活性化T細胞はPD-1シグナルを介し抑制されます。

(b)抗PD-1抗体の作用
活性化T細胞に発現するPD-1と抗PD-1抗体とが結合することにより、PD-1とPD-L1あるいはPD-L2との相互作用は阻害され、PD-1シグナルによるT細胞の抑制が解除されます。
二ボルバムの臨床効果
米国での治験では、非小細胞肺癌、前立腺癌、大腸癌、腎細胞癌などの固形癌、および悪性黒色腫(メラノーマ)を対象に投与する試験が実施され、いずれも有効例が認められ、特にメラノーマ29%や腎細胞癌では13%の奏効率が報告されています。

日本では、悪性黒色腫(メラノーマ)に対する国内第響蟷邯海嚢發ち娶率を認めたことで2014年治療薬として承認されました。

進行期非小細胞肺癌(扁平上皮癌)では、国内では第響蟷邯海靴ありませんが、海外に於いてプラチナ製剤を含む化学療法歴を有する患者に対する二次治療として、ドセタキセルを上回る有効性が示されました。

用法容量について
悪性黒色腫(メラノーマ)では、2/3週間間隔
非小細胞肺がんでは、3/2週間間隔

免疫チェックポイント阻害剤は、効果の発現形式や有害事象の特徴が、従来の抗癌剤とは異なります。
一部の患者さんには、比較的長期間に渡り効果が持続したり、きわめて稀ですが、効果が遅れて生じたりすることが報告されています。
二ボルバムの副作用
大腸炎、肺炎、甲状腺炎、下垂体炎、皮膚炎、儀薪尿病、筋炎、末梢神経炎、重症筋無力症等があり、死亡例も報告されています。
二ボルバムの薬剤費用
20咫 約15万円
100 :約73万円
例)体重60圓諒の1年約52週とした場合
悪性黒色腫(メラノーマ):約1523万円(治療費は含まず、全額自己負担)
非小細胞肺癌      :約2288万円(治療費は含まず、全額自己負担)
「抗PD-1抗体」が効く人の特徴
標準の治療が効かない大腸がんおよび他の癌を持つ人にPD-1阻害剤として知られる免疫療法剤、ペンブロリズマブ、が効くかどうかをミスマッチ修復遺伝子の異常が正確に予測する事がわかりました。

≪ニュース内容≫
米国ジョンズ・ホプキンス大学の研究グループが5月29日から6月2日にシカゴで開催された米国臨床腫瘍学会(2015ASCO)で発表すると共に、ニュー・イングランド・ジャーナル・オブ・メディシン誌に2015年5月30日に報告した。ペンブロリズマブは、「免疫チェックポイント阻害薬」と呼ばれる治療の一つで、幅広い種類のがんに対する効果が証明されつつあり、注目されている。Medエッジで紹介してきた通り「免疫療法」の一つ。免疫は体にもともと備わり、感染症やがんをはじめ病気の原因を攻撃する仕組み。免疫チェックポイントは、免疫の暴走を防ぐ仕組みになるが、がん細胞と関係すると問題となる。一つは、「PD-L1」「PD-1」というタンパク質が関係した仕組みがある。PD-L1というタンパク質をがんが持ち、人間の免疫細胞の持っているPD-1というタンパク質にくっつき免疫をまひさせる。そうなるとがんを攻撃できなくなる。さらに、「CTLA4」というタンパク質で免疫にブレーキをかける仕組みもある。ペンブロリズマブは、このうちPD-1を邪魔する薬となる。薬の効きやすい人をあらかじめ特定できる意味は大きい。
ミスマッチ修復遺伝子に欠陥がない人は薬が効かない
研究グループは48人のがんを持つ人を3つのグループに分けた。第1のグループでは13人が進行した大腸がんで、ミスマッチ修復遺伝子に欠陥があった。8人はペンブロリズマブが部分的に効いた。がんの直径が30%収縮したことを意味する。4人は病気の安定した期間を延長させる効果があった。1人は病気が進行した。第2のグループでは、25人が進行した大腸がんで、ミスマッチ修復遺伝子に欠陥はなかった。25人全員が効かなかった。第3のグループでは、10人がさまざまながんで、ミスマッチ修復遺伝子に欠陥があった。4人は膵臓/胆管がん、2人は子宮がん、2人は小さい大腸がん、1人は胃がん、1人は前立腺がんを持った。1人の子宮がんを持った人は完全に回復して、がんが消失した。5人は部分的に効いた。1人は病気の安定する期間を延長させる効果があった。3人の病気は進行した。ミスマッチ修復の欠陥は既に検査できるもので、免疫療法の効果に対する目印として活用範囲は広がりそうだ。
抗PD-1抗体 二ボルバム・抗CTLA-4抗体 イピリムマブ二剤併用療法
第b相CheckMate -012試験の最新データで、オプジーボR(一般名:ニボルマブ)とヤーボイR(一般名:イピリムマブ)の併用療法が未治療の進行期非小細胞肺がんにおいて臨床的に意義のある奏効を示す。
参考文献一覧
・米国ブリストル・マイヤーズ スクイブ社が2016年6月4日(米国現地時間)に発表しましたプレスリリースの日本語訳(抜粋)
・がん免疫応答抑制ネットワークと免疫チェックポイント阻害薬 国立がん研究センター先端医療開発センター 免疫TR分野
・Neutralizing tumor acidic environment improves immune-targeting therapies March 17, 2016 Cancer Research Moffitt Cancer Center
・がん免疫療法とPD-1/PDL1チェックポイント・シグナル伝達 Abcam
・がん細胞が免疫から逃れるメカニズムの解明−免疫チェックポイント阻害剤の効果予測への応用に期待 京都大学医学研究科腫瘍生物学、東京大学医科学研究所附属ヒトゲノム解析センター、 北海道大学大学院医学研究科免疫学、共同研究 2016年5月23日付で英国の科学誌「Nature」電子版にて公開
・がん免疫療法:基礎研究から臨床応用にむけて 2015年4月21日 杉山大介・西川博嘉 (国立がん研究センター先端医療開発センター 免疫TR分野)
・脚光を浴びる新たな「がん免疫療法」:小野薬品のオプジーボ  nippon.com
・抗PD-1抗体が治療歴のあるメラノーマ,非小細胞肺がん,腎細胞がんで腫瘍縮小効果を示すAnti-PD-1 (BMS-936558, MDX-1106) in patients with advanced solid tumors: clinical activity, safety, and a potential biomarker of response MediEigo
・抗 CTLA-4 抗体イピリムマブ(ヤーボイR)の特性と副作用への対応について 日本皮膚科学会悪性黒色腫の新薬に関する安全性検討委員会
・PD-1とLAG-3は協調して自己免疫の発症を制御する 科学技術振興機構(JST)イノベーション推進本部 研究領域総合運営部 徳島大学疾患ゲノム研究センター
・二ボルマブ(遺伝子組換え)の「使用上の注意」の改訂について 独立行政法人 医薬品医療機器総合機構
・免疫チェックポイント阻害剤の効く人に一つの特徴、「ミスマッチ修復遺伝子」の欠如が左右 米国ジョンズ ・ ホプキンス大学研究グループが2015米国臨床腫瘍学会年次総会で発表されると共に、オンライン 5 月 30 日ニュー イングランドの医療ジャーナル・オブ・メディシン誌に掲載