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白血球は免疫担当細胞

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漢方医学療法について
白血球は免疫担当細胞
免疫とは
広義には、生体防御に関わる免疫担当細胞指します。
しかしながら、血液に含まれる細胞成分や、骨髄系前駆細胞から分化する免疫担当細胞(好中球をはじめとした顆粒球(かりゅうきゅう)、単球、樹状細胞などを含み、リンパ球を含まない)。
一般にはリンパ球、顆粒球、単球の総称とされます。

末梢血(血管に流れている血液)に流れている白血球は通常、好中球・好酸球・好塩基球・リンパ球・単球の5種類とされています。

免疫とは、自己と非自己を区別し、非自己を排除して個体としての独立性や統一性を守る仕組み

ヒトや動物などが持つ、体内に入り込んだ「自分とは異なる異物」(非自己)を排除する、生体の恒常性維持機構の一つです。
一般に、薬物や化学物質などの排除には、肝臓の酵素による代謝が働くのに対し、免疫はそれよりも高分子であるタンパク質(ヘビ毒やハチ毒など)や、体内に侵入した病原体を排除するための機構として働くことが多い。

自分の目印(自己)クラスⅠMHC分子
私たちの身体の細胞膜上に発現している「自己の標識」=複数のタンパク質分子は、移植された臓器の組織の生(せい)着(ちゃく)と拒絶を左右するものとして発見されました。
人の六番染色体の短腕部(6p21.3)に、自己と非自己を識別するためのヒト白血球抗原(HLA)遺伝子がありますが、この抗原系は、白血球だけではなく、ほとんど全ての体細胞や血小板の表面にもあることから、広く主要組織適合抗原(major histocompatibility complex、 MHC抗原)とも呼ばれています。

特に病原体による感染から身を守るための感染防御機構として重要であり、単に「免疫」と呼ぶ場合には、この感染防御免疫のことを指す場合も多い。
免疫(感染防御免疫)は、体内に侵入するバクテリアやウイルスなどを妨害する障壁を創造、維持することで生体を防御する機構です。

免疫系は自然免疫(白血球)と獲得免疫(リンパ球)とに大別されます

自然免疫(生まれながらに備わっている免疫)にはある特殊な細胞が備わっており、それらは侵入物が自己を再生産したり宿主に対し重大な被害をもたらす前に発見、排除します。
これにより、病原体が体内で増殖して宿主に深刻な害を及ぼす前に対処する事ができます。
(最新自然免疫については後述)

獲得免疫は、抗体補体などの血中タンパク質による体液性免疫の他に、リンパ球などの細胞による細胞性免疫によって担われています。

体液性免疫と細胞性免疫
免疫には抗体を産生する体液性免疫と、感作リンパ球を誘導する細胞性免疫の2つがあります。
抗体は体液(血液、涙、唾液、消化管液、膣液(ちつえき)、精液など)中に溶解しているγ(がんま)‐グロブリンというたんぱく質で、免疫グロブリンともいう。
抗体にはIgG、IgM、IgA、IgE、IgDの5種類があり、いずれの抗体も抗原と特異的に結合します。(詳細は後述参照)

一方、細胞性免疫は、白血球の一種である特有の性状をもった感作リンパ球(抗原刺激を受け、抗原に対する記憶を保持しているリンパ球)が誘導されるものであります。
感作リンパ球は抗原と特異的に結合し、サイトカインなどの生理活性物質を放出します。
また、ウイルス感染細胞や腫瘍細胞を破壊する作用もあります


リンパ球には分化成熟して免疫グロブリンを産生するB細胞のほかに、胸腺で分化成熟するT細胞などがあります。

その他、食作用によって抗原を取り込んで分解してT細胞に提示する樹状細胞なども免疫機能の発現に関与します。

これらの細胞は骨髄で産生され、胸腺やリンパ節、脾臓などのリンパ系組織での相互作用をへて有効な機能を発揮するようになります。
一般的に『免疫』と聞いて多くの人が思い浮かべるのはこの作用です。

好中球(Neutrophil)の役割
末梢血内では白血球全体の50から70%を占め 、顆粒球では約90から95%を占めます。
細菌や真菌などの感染には好中球が最初に集結し、かつ主に好中球が対処しますが、好中球は体液性免疫細胞への抗原提示は行いません。

好中球が処理し切れなかった細菌などの異物をマクロファージなどが貪食し、抗原提示を行い、体液性免疫を獲得します。
怪我などをした後に傷口から発生する膿は、細菌との戦いで死んだ好中球の死体を主としています。
成人の末梢血内には概ね10の10乗個のオーダー(桁)の好中球が存在します。
体重50kgの場合でおおよそ80億個から300億個程度の数量です。

しかしながら好中球は血管壁や組織、脾臓・肝臓などにも末梢血内に匹敵する量の好中球が辺(へん)縁(えん)プールとして存在します。
さらに骨髄には末梢血内の10から30倍もの量の貯留プールが存在し、生体内すべてでは10の11乗のオーダー、数千億個の桁の好中球が存在します。
大きな貯留プールがある為、細菌感染時などには貯留プール内の好中球が動員され、末梢血内の好中球数は速やかに増加します。

また、食事や運動、ストレスなどのわずかな体の変化でも、その血流量の変化によって血管壁に滞留などで辺縁プールに存在していた好中球が末梢血内に移動するので、好中球数は変化しやすく細菌感染時には、炎症性のサイトカインの働きで骨髄内での生産も亢進されます。
血液内での好中球の寿命は1日以内、概ね10時間程とされ、組織内では数日です。
好中球は骨髄内で生産され、1日当たり10の11乗個(1000億個)程度作られます。

好中球の生体防御のしくみ:細菌や真菌類が侵入した組織では、組織内のマクロファージや肥満細胞がただちに反応し、インターロイキン1(IL-1)などのサイトカインを放出し、それらのサイトカインにより、組織内の細胞は炎症性変化を起こします。
また、それ以外の過程を含め、炎症性変化を起こした組織はインターロイキン8(IL-8)を代表とする多種類のケモカイン(サイトカイン)や、その他の多種類の好中球遊走刺激因子(IL-6やロイコトリエンなど)を放出します。
それらの刺激因子や細菌自身が産出する物質、活性化された補体を表面のレセプターで感じ取った好中球は遊走運動を活発化させます。

好中球は表面に多数あるレセプターで刺激因子の濃度の濃い薄いを感じ取り、因子の濃度の濃い方向に遊走し、感染巣に集結します。
多くの場合、感染巣は血管外であり、好中球は血管壁を通過しなければなりません。
炎症箇所に近い毛細血管壁で好中球は血管上皮に粘着し、血管上皮細胞と好中球それぞれが各種因子によって変化を起こし、好中球は血管上皮細胞の間をすり抜け、血管外に出た好中球は組織内を遊走し、感染巣に到達します。

炎症組織からの遊走刺激因子により、骨髄内の貯留プールなどに存在する好中球も刺激を受け、遊走運動を開始し、また骨髄では好中球の生産が亢進されます。
それらによって、細菌類の感染には大量の好中球が動員されることになります。

感染巣に到達した好中球は、好中球形質膜がこれを包むようにして、好中球内に取り込みます。
好中球内で細菌類を取り込んで裏返しになった細胞膜の袋を食胞と言い、細菌類を取り込んだ食胞は顆粒と融合し、顆粒内要物が食胞内に放出されます。

顆粒内容物が放出された食胞内で細菌類は2つの手段で殺菌されます

1つは酸素依存性の機構で、NADPH酸化酵素系の働きで活性酸素や過酸化水素を発生させ食胞内にて殺菌します。
アズール顆粒に含まれるミエロペルオキシダーゼは過酸化水素(H2O2)と塩素イオン(Cl-)から次亜塩素酸(じあえんそさん)(HOCl)を産生します。
細菌は、酵素反応によって生じたHOClにより、効率的に殺菌されます。

もう1つは非酸素依存性の機構で、顆粒から放出される殺菌性酵素(ラクトフェリン、リゾチーム、エラスターゼなど)などで殺菌・分解します。
細菌類を飲み込んだ好中球はやがて死亡し、死体は膿になって体外に放出されるか、組織内のマクロファージなどにより処理されます。

血液内の好中球が増加する状況
感染症、炎症、急性出血、溶血、慢性骨髄性白血病、真性多血症、中毒、悪性腫瘍、尿毒、痛風、副腎皮質ステロイド投与、一時的なもの(運動、食事、ストレス)、喫煙などで好中球は増加します。

血液内の好中球が減少する状況
ウィルス感染、リケッチア感染、再生不良性貧血、悪性貧血、ビタミンB12欠乏や葉酸欠乏、急性白血病、骨髄線維症、脾腫、好中球に対する自己免疫疾患、薬剤の使用などで好中球は減少することがあります。
抗がん剤投与では顕著に減少する他、極めて多数の薬剤が好中球の減少に関係する事がありえます。

好酸球(Eosinophil)役割
末梢血内の白血球の2から5%を占める好酸球も弱い遊走・貪食能力を持ちますが、主な役割では寄生虫・寄生虫卵の傷害あるいはアレルギー反応の制御を行います。
好酸球は、I型アレルギーで増加し、ヒスタミンを不活性化します。

また、寄生虫の感染などで増殖し、好酸球特異顆粒はMBP00.0.(major basic protein)を含んでいて高度に陽性に帯電しているタンパク質は、寄生虫に毒性を発揮するとともに、哺乳類の上皮細胞を溶解する作用も持っています。

好酸球が関係する病気:鼻茸、 好酸球増多症候群、 好酸球性筋膜炎、 Wells症候群(好酸球性蜂窩織炎)、 慢性好酸球性白血病/特発性好酸球増加症候群、 好酸球性肺炎、 木村病。

好塩基球(Basophil)
末梢血内の白血球の1%以下です。
顆粒の中には、ヒスタミン、ヘパリン、ヒアルロン酸などが含まれており、アレルギー反応の際このヒスタミンが放出され、アナフィラキシーショック・じんましん・気管支喘息などを引き起こすとされています。

また、IgE依存性の慢性アレルギー症状(抗原投与から3~4日をピークとする)において、炎症の誘導について中心的な役割を担っていると推定されています。

生体の免疫機能に関与していると考えられるが、はっきりとした存在意義は不明です。


赤血球は酸素の運び屋
単球(Monocyte)は組織内に移るとマクロファージになる