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ABC
ABCトランスポーター(ATP-binding cassette transporter)
ATPのエネルギーを用いて物質の輸送を行う膜輸送体の一群である。
構造的特徴を共有する非常に大きなタンパク質スーパーファミリーをなし、現生のすべての生物に存在する。

生体膜を通して様々な基質、例えば脂質、糖、ビタミン、その他の代謝に関わる物質、外来の薬物、イオン、ペプチド、タンパク質などを輸送するものが知られ、輸送の方向も細胞の内から外へ(不要物を排出し、あるいは細胞外で働く物質を分泌する)、外から内へ(必要な物質を取り込む)の両方、さらに細胞内でオルガネラ内外間の輸送を司るものがある。

分子全体の基本構造としては、ATP結合ドメイン2個と膜貫通ドメイン2個からなる。
医学的に重要なものとして、細菌や癌細胞の多剤耐性の原因となるものや、遺伝病である嚢胞性線維症の原因となるCFTR(塩素イオンチャネル)などがある。

ABC輸送体は、現に投与されている薬剤のみならずその他の薬剤に対しても耐性が生じる現象である、多剤耐性で重要な役割を演じている。
この原因の一つとして、ABC輸送体の増加により細胞内からの薬剤の排出が増えることがある。

例えばヒトなどの動物にあるABCB1は、抗癌剤を細胞外に汲み出す働きがある。
Pgp(P糖タンパク質)はMDR1とも呼ばれ、ABC輸送体の中で一番詳しく研究されている。
Pgpは、広い範囲の脂溶性の薬物・異物や不要物を基質として細胞外へ排出する、一群のABC輸送体に含まれる。
これらによる薬物等の細胞外への排出は、「薬物代謝の第3相」と呼ばれることもある。
またこのようなABC輸送体の遺伝子には、薬物代謝酵素と同様に薬物により発現誘導されるものもあり、薬剤の相互作用の原因となる場合もある。

ATP-Binding Cassette (ABC) タンパク質は、膜結合ドメインとそれに続くATP結合ドメインをもつ一群の膜タンパク質で、生体膜を介した物質輸送に重要な役割を担っています。
ABCタンパク質には、その構造上、フルサイズとハーフザイズが存在し、後者はダイマーとして機能しています。
(図1)。例えば、脂溶性異物(抗がん薬など)を排出し、ガン細胞の多剤耐性に係わるP糖タンパク質(ABCB1)、末梢組織の細胞からコレステロールを排出し、HDLの形成に係わるABCA1など、現在ヒトにおいて48種類のABCタンパク質が同定されています

これらは、アミノ酸配列の相同性より、ABCAからABCGまでの7つのサブグループに分類され、それらの異常は、種々の遺伝性疾患の原因となっています。



ADAM型メタロプロテアーゼ
ADMプロテアーゼは、メタロプロテアーゼ・ディスインテグリンファミリーというグループに属するタンパク質分解酵素。
メタロプロテアーゼとディスインテグリンは共に蛇毒から発見された成分で、出血作用や血液凝固阻害作用がある。
この2つの分子が結合した形態(メタロプロテアーゼ・ディスインテグリン)を持つ様々なタンパク質や酵素が種々の動物の組織中に存在し、各種の細胞間相互作用に関わっていることが近年明らかになってきている。

AFP(α-フェトプロテイン)
血中AFPは胎生期の卵黄嚢や肝臓で生理的に産生される癌胎児性たんぱくです。肝細胞癌のスクリーニングや治療効果の判定に用いられますが、肝芽細胞腫、ヨークサック腫瘍、肝硬変、肝炎、妊娠後期にも高値を示す。

Akt
AktはPH(Plekstrin Homology)ドメインをN末に有するセリン/スレオニンキナーゼである。Aktの活性化にはThr308とSer473の2ヶ所のリン酸化が必要であり、このリン酸化はともにPI3キナーゼの下流で制御されている。
つまり、PI3キナーゼによって産生されたPI(3,4,5)P3がPDK1 (Thr308をリン酸化するキナーゼ)とAktのPHドメインに結合し、これらの分子を膜近傍に集め、Aktのリン酸化を引き起こす。
Ser473をリン酸化するPDK2の実体はまだ不明である。



Apaf-1(apoptotic protease-activating factor )
Apaf-1はカスパーゼ9の調節因子です。
Apaf-1はCARD領域のほかにヌクレオチド結合性多量体領域(NOD)とWD40リピート領域をもっています。
アポトーシスを起こすようなシグナルがくるとミトコンドリアからチトクロムCが流出します。
Apaf-1のWD40リピートはチトクロムCのセンサーとして働き、チトクロムCがWD40リピートに結合するとApaf-1はNODを介して多量体化します。
これによってApaf-1のCARDに結合したカスパーゼ9はお互い近くに集められて活性化するのです。
このApaf-1の多量体化にはATPまたはdATPを必要とします。

WD40リピートをもたないApaf-1はチトクロムCやATPによらず常に多量体を形成して活性化します。
WD40リピートは通常、多量体化を抑制していてシグナルがきたときだけ活性化できるようになっているのです。

Apaf1は、アミノ末端側から順に、カスパーゼ結合領域(caspase recruitment domain, CARD)、ATPの結合とホモ多量体化に必要な領域(nucleotide-binding oligomerization domain, NOD)、チトクロムCが結合するWD40リピートの3つの領域からなる。

アポトーシスの過程でミトコンドリアから放出されたチトクロムCがWD40リピートに結合し、NODにATPかdATPが結合すると7つのApaf-1分子が車輪のスポーク状に集合し、さらにカスパーゼ9と互いのCARDを介して結合し、アポプトゾーム様の巨大蛋白複合体、インフラマゾームを形成し、カスパーゼ1を活性化して、IL-1βなどのサイトカインの活性化に重要な役割を果たすと考えられる。

これらのApaf-1様蛋白はPAMPのセンサーとして働いている可能性がある。
NODはアミノ末端にCARDを持ち、RICK (RIP-like interacting CLARP kinase)を介してNF-kBを活性化する。
Nod1はカスパーゼ9を活性化してアポトーシスも誘導する

ARDS(急性呼吸窮迫症候群)
acute respiratory distress syndrome

臨床的に重症の状態の患者に突然起こる呼吸不全の一種である。
特に発症前後の状態を急性肺傷害 (acute lung injury, ALI) と言う。

ATMとATMタンパク質
ATMは、毛細血管拡張性運動失調症 (ataxia-telangiectasia; AT) の原因遺伝子として、1995年に染色体11q22.3領域から単離され、AT患者で変異を起こしている(AT mutated)という意味でATMと名付けられた11番染色体上の大きな遺伝子で、DNAの15,000以上の塩基から構成され、66セグメント (エクソン) あり、またその生成物であるATMタンパク質の構造についての情報を有しています。

ATは原発性免疫不全症に分類される疾患で、臨床症状としては神経症状、免疫不全、高発がん性、早老症、糖尿病症状などを呈し、細胞の形質としては放射線高感受性、染色体不安定性などを示す。
ATMタンパク質は、PI3 Kinaseファミリーに属するリン酸化酵素であり、基質となるタンパク質のセリン/スレオニン残基をリン酸化する。
ATMはDNAの二本鎖切断によって活性化され、p53c-AblH2AXChk2BRCA1NBS1SMC1遺伝子などのリン酸化を行う

これらは細胞周期チェックポイント、DNA修復、アポトーシス、ストレス応答など様々な細胞応答に関与する因子であり、これらの活性化を担うATMは、DNA損傷応答のイニシエーターである。

ATP (Adenosine Triphosphate)アデノシン三リン酸
生物体で用いられるエネルギー保存および利用に関与するヌクレオチドであり、すべての真核生物がこれを直接利用する。
生物体内の存在量や物質代謝における重要性から「生体のエネルギー通貨とされている。
エネルギーの収支式
ATP+H2O → ADP(アデノシン二リン酸)+Pi(リン酸) ΔG°’(標準自由エネルギー変化)= -7.3kcal/mol
ATP+H2O → AMP(アデノシン一リン酸、アデニル酸)+PPi(ピロリン酸) ΔG°’ = -10.9kcal/mol


ATPクエン酸リアーゼ(ATP-citrate lyase:ACLY)
細胞質中のクエン酸からアセチルCoAが生成される時、反応を触媒する酵素、ATPクエン酸リアーゼという酵素が働きます。
ガルシニア(HCA)を摂取すると、HCAはクエン酸に比べてATPクエン酸リアーゼと非常に結びつき易いので、細胞内に、ある程度の濃度のHCAが存在するとATPクエン酸リアーゼの働きが阻害され、クエン酸からの脂肪合成が抑えられます。

ATPクエン酸リアーゼの働きが阻害されると、クエン酸量が増加することになり、結果的にグルコースからのグリコーゲン生成量が高まり、血液中のグルコースの濃度が安定して、空腹感が抑制されることになります。

さらに、アセチルCoA生成が減少するとマロニルCoAの濃度も低下します。
その結果、マロニルCoAの減少により活性化する酵素であるカルニチンパルミトイルトランスフェラーゼI(CPT-I)が活性化するとともに脂肪酸の燃焼(分解)が促進され、体脂肪蓄積が抑制されることになります。

従って、糖質の多い食事(高炭水化物食)では、余った糖分が脂肪酸合成に向けられるのを抑制し、体脂肪の蓄積が抑制されることになります。
さらに糖質からの分解により生成するクエン酸量の増加に伴い、結果的に肝臓でグルコースからのグリコーゲン合成の促進、クエン酸からアセチルCoA生成の低下によるコレステロール生合成低下、マロニルCoA濃度の低下による脂肪酸と脂肪合成の低下により血漿中性脂肪濃度の低下、エネルギー消費の増加などがHCAの効果として報告されています。



Bacteroides(バクテロイデス属)
グラム陰性の偏性嫌気性非芽胞形成桿菌。
菌種によって運動性のあるものとないものに分かれる。
GC比は40から48%で、細胞膜にスフィンゴ脂質が含まれているという特徴がある。
多糖および単糖を代謝して栄養源としており、動物の腸内に大量に存在する。
人間の大便には1gあたり100億から1000億匹存在する。
基本的には病気の原因とはならないが、日和見感染症の原因となる細菌のひとつである。エリスロマイシンやテトラサイクリンなどの抗生物質に耐性を示す菌株が増えており、薬剤耐性遺伝子のプールとなることが懸念されている。

BCA225
血中BCA225は乳癌で特異的に高値を示すが、特に再発乳癌のときに陽性率が高い。 その為、乳癌術後の再発や治療の経過観察に有用です。

Bcl-2ファミリータンパク質
アポトーシスの制御に関与し、遺伝子配列の相同性から Bcl2 ファミリーとされるタンパク質群は Bcl2-like、Bax like、BH3-only の 3っのサブファミリーに分類されます。
このうち Bcl2-like サブファミリーは抗アポトーシス活性を示す一方、Bax-like と BH3-only サブファミリーのタンパク質はアポトーシスを促進することが知られていますが、その開始メカニズムなど、多くのことがまだ明らかになっていません。

BFP(塩基性フェトプロテイン、basic fetoprotein)
BFPは癌胎児性たんぱくのひとつで、広範囲の悪性腫瘍に対するマーカーです。
血中BFPは消化器、泌尿・生殖器、及び肺小細胞癌などの腫瘍に高値を示すが、特異性が低いために肝炎や肝硬変、子宮疾患、前立腺疾患などの良性疾患でも疑陽性になります。
また、尿中BFPは尿路系腫瘍の腫瘍マーカーとしても有用です

Bicoid
Bicoid、Hunchback及びCaudalタンパク質は転写因子である。
BicoidはDNAとnanos mRNAの両方と結合するDNA結合ホメオドメインを持つ。BicoidはcaudalのmRNAの3' 非翻訳領域にある特定のRNA配列と結合する。

初期胚でのHunchbackタンパク質の量は新しいhunchback遺伝子転写及び接合子性に生産されたmRNAの結果による転写により増大する。
ショウジョウバエの初期胚発生の間に細胞分裂のない核分裂が起きる。
多くの核が細胞の外周へ作られる。
それらの核での遺伝子発現はBicoid、Hunchback及びCaudalのタンパク質により調節される。
例えば、Bicoidはhunchback遺伝子転写の活性化因子として作用する。

Bifidobacterium(ビフィズス菌)
グラム陽性の偏性嫌気性桿菌の一種で、放線菌綱Bifidobacteriales目Bifidobacterium属に属する細菌の総称。

人間の腸管にはB. bifidum、B. breve、B. infantis (B. longum subsp. infantis に再分類)、B. longum、B. adolescentisの5種が棲息する。特に母乳栄養児の糞便に多く存在する。
糖を分解して乳酸、酢酸を作るヘテロ乳酸菌の仲間でもある。
善玉菌として腸内の環境を整えるほか、花粉症などアレルギー症状の緩和にも貢献していることが分かってきた。

BRCA1(breast cancer susceptibility gene I)
がん抑制遺伝子の一種であり、その変異により遺伝子不安定性を生じ、最終的に乳癌や卵巣癌を引き起こします。
BRCA1はDNA損傷時のシグナル伝達において重要な役割を持つことが知られております。
細胞周期に依存したリン酸化を受けるほか、DNA損傷に伴ってもリン酸化を受け、リン酸化されたBRCA1はRAD51などのDNA修復蛋白と協調してDNA損傷を修復する

CA125(carbohydrate antigen125)
CA125はヒト卵巣漿液性腺癌の培養細胞を用いて得られたモノクローナル抗体が認識する癌関連抗原です。
血中CA125は卵巣癌で約80%の陽性率を認めるが、子宮内膜症や性周期、妊娠により血中濃度が上昇するためその判定には注意が必要です。

CA15-3(carbohydrate antigen15-3)
CA15-3はヒト乳脂球の膜上に存在する抗原(MAM-6)を用いて作製した抗体が認識する抗原です。
血中CA15-3は乳癌に対する特異性は高いが、原発乳癌よりむしろ進行性乳癌や再発乳癌の陽性率が高いため、再発の予知や治療効果の判定として有用です。

CA19-9(carbohydrate antigen19-9)
CA19-9はLewis式血液型物質に関連した腫瘍マーカーのひとつです。
血中CA19-9は消化器系の腫瘍のスクリーニングなどに用いられるが、特に膵臓・胆道癌で陽性率が高い
そのため、膵臓癌の治療効果の判定や再発の早期発見に効果を発揮します。

CA54/61(CA546、carbohydrate antigen54/61)
血中CA54/61は卵巣癌に高い陽性率を示すが、なかでも粘液性嚢胞(のうほう)腺癌では早期から高値となります。
また、卵巣の良性腫瘍や性周期、妊娠による影響が少なく特異性が高いため、卵巣癌の診断に有用です

CA72-4(carbohydrate antigen72-4)
血中CA72-4は卵巣癌に対する腫瘍マーカーではあるが、乳癌や胃癌、大腸癌の検出にも有用です
また、卵巣や肝臓、腎臓の良性疾患における疑陽性率が低く癌に対する特異性が高い。

c-Abl
細胞分裂など、数多くの細胞プロセスに関与している酵素。
c-ablの遺伝子は9番染色体に存在する。
慢性骨髄性白血病(cml)の患者の大半では、9番染色体のc-ablの部分が途中で途切れて、その先が22番染色体の一部と入れ替わっていて、その結果、bcr-abl融合遺伝子が形成されている。

CagA
ヘリコバクターピロリが作り出すCagA(ギャグエー)と言うたんぱく質。
CagAはピロリ菌以外の生物には見られない特殊なもの。
胃の表面の粘膜にすみ着いたピロリ菌から粘膜の上皮細胞に注入されると、細胞の働きに様々な混乱が起きて、発がんリスクを高めると考えられている。

CagAを作るピロリ菌は、とげの生えたような形をしている。
とげは注射針のような管状構造となっており、このとげを通してCagAが胃の表面の上皮細胞に注入されるという仕組みだ。

上皮細胞に入ったCagAは三つの働きをする事がわかった。
一つ目は、細胞の増殖を制御するたんぱく質と結合し、上皮細胞の異常な増殖を引きおこす点だ。
異常増殖はがん細胞で見られる。

二つ目は、細胞同士の結合にかかわるたんぱく質と結びついて、<>u細胞同士の結合機能を失わせて細胞をバラバラにしてしまうことだ。
その結果、胃粘膜に隙間ができて胃酸が粘膜の内側に染み込み、胃炎や胃潰瘍を起こしやすくする。
繰り返し炎症が起こるため、がん化しやすくなるとしている。

さらに、胃の上皮細胞を、腸など他の臓器の細胞に成長(分化)する幹細胞に変えてしまうのが、三つ目の働きだ。この幹細胞ががん細胞のもとになることが、推測されるという。

畠山教授は幹細胞に変わる際に働く遺伝子を調べたところ、胃の上皮細胞では本来眠っていて働かない遺伝子だった。
こうした遺伝子によって、上皮細胞が未分化の幹細胞に変化したとみられる。
山中伸弥・京都大教授が発明したiPS細胞(人工多能性幹細胞)が、人間の皮膚などの細胞に、遺伝子3〜4種類を組み込んでできるのとよく似た仕組みだとしている。

CARD (caspase recruitment domain)
プロドメインは、カスパーゼの種類ごとに大きく異なった構造を持ち、イニシエーター・カスパーゼはエフェクター・カスパーゼよりも大きなプロドメインを持つ。カスパーゼ-9、-2、-1、-4は、CARD (caspase recruitment domain) と呼ばれる領域

CD44
糖たんぱく質CD44は細胞-細胞, 細胞-細胞間基質(ECM;extra cellular matrix)を接着させる接着分子のひとつで他に類縁のない特殊な分子である。

CD44はヒアルロン酸をはじめとする細胞外マトリックスと結合する接着分子である。
1.リンパ球ホーミング
2.リンパ球活性化、
3.細胞-細胞間接着及び細胞-基質間接着、
4.細胞運動、
5.癌細胞増殖・転移などに深く関与している。
そしてその機能は発現量だけでなく、alternative splicing(選択的スプライシング)によるバリアントアイソフォームの発現や、糖鎖付加やリン酸化といったいわゆる翻訳後修飾によっても制御される。
また近年の報告では、CD44は様々な固形癌における癌幹細胞マーカーとして注目されており、その発現意義および機能を解析することは非常に重要であると考えられる。

CD44バリアントアイソフォームによる活性酸素調節機構
最近の研究で、CD44V(CD44バリアントアイソフォーム)が細胞膜においてシスチントランスポーターであるxCTと結合し、グルタチオン生成を促進することで癌細胞の活性酸素の蓄積を抑制し、酸化ストレスへの抵抗性を高めている。

また胃癌マウスモデルを用いた生体レベルでの解析から、CD44の発現抑制は酸化ストレスシグナルに関連するp38 MAPキナーゼの活性化や細胞周期の制御タンパク質であるp21の発現亢進を誘導するとともに、腫瘍の増殖を著明に抑制することが分かった。

このように、これまで単なるがん幹細胞マーカーのひとつと考えられていたCD44が活性酸素種(ROS)の制御を介して癌幹細胞としての特性を維持するために機能的に働くことは、癌細胞が抗癌剤や放射線治療に対して抵抗性を示すひとつの分子機構であると考える。


xCT:シスチントランスポーターxc-系は、細胞内グルタミン酸との交換輸送により、細胞外のシスチンを細胞内へ輸送する。また、その活性は酸化ストレスで誘導される。
CD44細胞外ドメインのproteolytic cleavage(切断)による機能調節

リンパ球やある種の癌細胞では培養上清中(条件培地)に可溶型(溶解できる)CD44(soluble CD44)と呼ばれる細胞内領域及び膜貫通領域を欠いたCD44が存在することが知られている。
このsoluble CD44は実際に癌患者の血清中にも検出され、胃癌や乳癌患者では血清soluble CD44値と病期との間に相関を認めることが報告されている。

実験的にも高転移性のメラノーマ細胞株では培養上清中に大量のsoluble CD44が検出されるが、同じ細胞由来の低転移株では殆ど検出されないことから、soluble CD44の増加は癌の進展の指標となりうるのではないかと予想されていた。

我々は、このsoluble CD44はCD44が細胞外領域にてADAM型メタロプロテアーゼであるADAM10, ADAM17によってcleavage(切断)された後のN端フラグメントであることを発見した。
さらにこのCD44 cleavageをメタロプロテアーゼ阻害剤やADAM10, ADAM17のRNAiによって抑制すると、CD44のリガンドであるヒアルロン酸上での癌細胞運動能が抑制されることから、CD44 cleavageという現象そのものが癌細胞運動に大変重要であることが分かった。

さらに、CD44 cleavageを引き起こすシグナルを解析した結果、細胞外カルシウムの流入やPKCおよび低分子GTP結合蛋白質Racの活性化によって誘導できることを見出した。

また、細胞外カルシウムの流入は、ADAM10を活性化し、CD44の切断を引き起こすこと、一方、PKCおよび低分子GTP結合蛋白質Racの活性化はADAM17を介したCD44切断に関わっていることを見出しており、様々な刺激によって異なるADAM型MMPの活性化が誘導され、CD44の発現から分解までのサイクル(turn over)を促進させることで、癌細胞の細胞外マトリックスとの接着・離脱を制御し細胞運動を効率良くしていることが推測される。

上皮-間葉転換(EMT)におけるCD44の発現意義

最近の多くの研究の成果から、上皮性腫瘍つまり癌の浸潤は、腫瘍の周縁部における腫瘍細胞の細胞-細胞間接着の喪失から始まることが明らかになってきた。

細胞間-細胞間接着を喪失したそれらの細胞では、細胞膜から核へのシグナルが伝わることによって、上皮としての特性を失い周辺組織に移動しやすい間葉系細胞としての特徴を獲得する上皮間葉転換(EMT)と呼ばれる現象が誘導され、それが腫瘍の浸潤および転移の引き金を引く重要なイベントであると考えられている。
EMTが起こると、細胞間接着は減少し、細胞極性は失われ、間葉系細胞としての性質、つまり細胞外マトリクス(ECM)との相互作用の増加や浸潤機能の亢進、が見られる。

EMTは胎児の発生や創傷治癒などの生理的イベントとして重要であると同時に、最近では各種臓器の線維症と呼ばれる疾患の主たる原因であることが解明されつつある。
因って(よって)、EMTの誘導を阻害し、細胞の上皮性を維持することが、各種疾患の予防あるいは治療に直接つながると考えられる。

網膜色素上皮細胞は長期の培養においても上皮性が維持されている細胞だが、炎症性サイトカインであるTNF-αを作用させると、カドヘリンの低下、ECM産生の増加、線維芽細胞様の形態変化など典型的なEMT様変化を呈し、ECM内に細胞が遊走集積する特徴的な線維性集塊(EMT-associated fibrous deposit: EAFD)の形成を認めるようになる。
我々はこのEMTの結果生じるEAFDの形成にはヒアルロン酸産生の増加とCD44-ERMタンパク質の相互作用が関わることを明らかにした。

また、この相互作用はTGF-β 受容体の細胞内局在を制御しEMTを誘導する重要なシグナルであるTGF-β-SMAD系を調節していることを見出だしている。
近年の報告から乳癌などの癌幹細胞はEMT phenotypeを呈することが知られている。
このことからもCD44がEMTを制御するメカニズムの解明は癌幹細胞の維持機構を明らかにすることができるとともに癌幹細胞を特異的に標的とした治療法の開発にもつながると考えられる。
文献「Cancer Cell」3月号オンライン版2011.3.14

CDX1
CDX1 と CDX2 は( caudal-related homeobox)ホメオ 遺伝子ファミリーのメンバーであり、ホメオドメイン転写因子をコードしている。
CDX1 と CDX2 は腸上皮細胞の増殖、分化を制御することが示唆されている一方で、ヒト大腸癌でその発現が抑制されている。

CEA(癌胎児性抗原、carcinoembryonic antigen)
CEAは大腸癌組織の抽出物で、胎児の消化管にも存在する癌胎児性抗原です。 血中CEAは食道、胃、直腸等の消化器系の腫瘍マーカーとして広く用いられていますが、乳癌や卵巣癌などの多くの腫瘍で高値となるため臓器特異性は低く、良性疾患やヘビースモカーでも疑陽性となります。

Chk2(checkpoint kinase 2)
Chk2には、構造的には違うが役割の似たChk1 がある。
DNA の二重螺旋の開裂が起こると、MRN(Mre1 Rad50 Nbs1)と呼ばれる感知因子と、ATM(ataxiatelangiectasia mutated)kinase によって、Chk2 のスレオニン68 がリン酸化される事によって、Chk2は活性化される。
最初のリン酸化後、Chk2 二量体はスレオニン383 同士のteans リン酸化によって最大活性を得る。
Chk1 はATR とATRP によって活性化される。
Chk2 は様々な因子をリン酸化する。

Clostridium(クロストリジウム属)
真正細菌の一属。偏性嫌気性で芽胞を形成するグラム陽性の桿菌である。
クロストリジウム属の菌は、土壌内部や生物の腸内などの酸素濃度が低い環境に生息する偏性嫌気性菌であり、酸素存在下では増殖できない。
一般に偏性嫌気性菌は、スーパーオキシドディスムターゼやカタラーゼなどの活性酸素を無毒化する酵素を持たないため、酸素がある通常の環境下では不活化するが、クロストリジウム属の菌は酸素存在下で、耐久性の高い芽胞を作って休眠することで、死滅を免れることができる。
この性質から、他の偏性嫌気性菌が生き残れない状態でも生き残るため、偏性嫌気性菌の中では比較的古くからその存在が発見され、研究が進められてきた。

クロストリジウム属の一部には、ヒトに対する病原性を有するものも知られている。
中でも、破傷風菌やボツリヌス菌などは、強力な神経毒を産生する。
その反面、近年、医療分野においてその偏性嫌気性菌としての能力を利用したがん治療への応用が期待されている。

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